元気で〜す

2021年9月27日

元科学環境部長、横山裕道さんが、久しぶりに長期連載に挑戦――「宇宙から見る気候危機」を「環境新聞」に

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連載12回目(環境新聞2021年9月15日付)

 世界的に自然災害や異常気象が多発している。地球温暖化による気候危機が現実のものとなったのだ。このままでは過酷な未来が現在の子どもたちを待ち受ける。現役を離れても温暖化の問題を書き続けたいと思ってきた。だが正面から気候危機を取り上げてもあまり面白くない。何か新たな捕らえ方はないものか。

 こう考えて、たどり着いたのが「宇宙の視点から考えてみよう」ということだった。いま太陽系外での惑星発見ラッシュが続き、地球外知的生命探査(SETI)も根強い人気を集めている。「第2の地球」では知的生命が人類以上の文明を発展させ、既にエネルギー・環境問題を克服しているという考え方もある。もしそうなら、彼らと接触できれば気候危機を乗り切る重大なヒントを聞けるかも知れない。

 そもそも生命のもとは、宇宙からもたらされた可能性が強い。巨大隕石の地球への落下が人類誕生のきっかけになるなど、我々と宇宙の関係は極めて深い。地球の環境がこれ以上ひどくなれば、人類の宇宙進出も現実味を帯びてくる。「宇宙は人間出現を意図していた」とする人間原理の考え方もある。いま宇宙の視点から、地球上で偶然も重なって生命や人類が誕生し、化石燃料の大量使用から未曽有の事態に陥ったことを振り返ってみることは、地球温暖化・気候変動への理解を深め、解決策を見出すために有意義だろう。

 こんな考え方を旧知の環境新聞社編集部長に伝えたところ、2021年春から「環境新聞(週刊)」で月2回の連載を2年間やりましょう、というありがたい返事をいただいた。カラーページの最終面に3分の1の枠をもらい、「宇宙から見る気候危機」のタイトルで連載が始まった。1回目は<架空ドキュメント「地球外知的生命がいた」 電波検出で世界が興奮――2040年>という見出しが躍った。

 「まず2040年の世界にタイムスリップしよう」と書き、温暖化がどうなっているかにスポットを当てた。

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2100年の天気予報。こんな予報が出るようでは大変なことになる(環境省提供)

 <世界的に夏の熱波の襲来は耐えられないものになった。40℃を超える日が頻発し、欧米や日本の大都市では日中は人がほとんど出歩かない。日本で最高気温が40℃以上の日は酷暑日と名付けられた。熱中症による死者の数はどの国でも急増し、動植物への影響も目立つ。アフリカやアジアでは干ばつが襲い、水と食糧不足に悩む地域が増えた。島国では海面水位の上昇が現実的な脅威となった。>

 こんな時に中国が「地球外知的生命からの電波を検出した」と発表する。「高度な文明がもう一つあった」という世紀の大ニュースに世界は興奮する。温暖化対策の専門家の間からは「我々の気候危機を知られたら恥ずかしいぞ」という率直な感想が漏れる――。

 この後も<「第2の地球」も異常事態体験か><熱心に続く地球外知的生命探査>などをテーマに書いている。「月2回なら十分余裕はある」と最初は考えたが、原稿執筆、ゲラの確認、参考文献やSFに目を通すなどやるべきことはいっぱいある。それでも楽しみながら執筆している。現役時代に一人での長期連載は週1回の科学面に「大地震 警報時代の幕開け」を1年以上続けたことがある程度。それ以来のことに老体を鞭打ちながらの挑戦となった。

 科学部長だった1996年に科学部の名称を科学環境部に変え、環境面を創設した。地球温暖化が必ず大きな問題になるから、それに備えようと考えたのだった。当時は気候危機の言葉はなく、やっと低炭素社会の言葉が使われ始めたころだ。それからちょうど4半世紀。温暖化は予想以上に高じ、現代文明が問われると同時に、国家の安全保障上の重大問題とまで認識されるようになった。

 終活に入る前に、ずっと追いかけてきたテーマでもある今回の連載だけはしっかり書き上げたい、と思っている。これまでの連載分は、過去に本を出版した紫峰出版のHPで読めるようになっている。 https://www.shiho-shuppan.com/

(横山 裕道)

※横山裕道(よこやま・ひろみち)さんは1969年入社。東京社会部、科学部などを経て科学環境部長、論説委員。2003年退社後に淑徳大学教授を務めた。