2021年6月22日
元編集委員、倉嶋康さんが「松川事件・諏訪メモ」スクープで55年ぶりの主筆感謝状を贈られた思い出をフェイスブックに
戦後の大きな冤罪事件の一つ「松川事件」で、被告のアリバイを証明し無罪の判決を導いた「諏訪メモ」を発見し、スクープとして報道した倉嶋康さん(88)が、報道から55年ぶりに主筆感謝状を贈られた経緯を、ご自分のフェイスブックで報告しています。倉嶋さんは当時を検証する「記者クラブ」を連載、この表彰については「第1部(138)」で報告しています。倉嶋さんは、和凧を持って世界25か国を旅した体験などもフェイスブックに連載しています。

2012年春、自宅に電話がかかってきました。女性の声で「もしもし、毎日新聞にいらした倉嶋さんですか。こちら東京本社の社長室です。丸山室長に代わります」。これには驚きました。定年退社してから干支で2回りもたっています。年1回の旧友会に時々顔を出すくらいの本社から電話。しかも社長室なんて現役時代からまったく縁がありませんでした。
いまは社長になっている丸山昌宏室長の話を聞いてもっとびっくりしました。「倉嶋さんが55年前に書いた松川事件の諏訪メモの特ダネに対して主筆から感謝状をお贈りしたいのです」。なんですか今ごろと思いながら喜んでお引き受けし、指定された日に出掛けました。実は若い日に書いたあのスクープ記事について、普通は出してもらえる「特賞」を頂いていなかったのです。上の人たちはあれが新聞に載った時はそんな大特ダネとは気づかず、また最高裁で無罪が確定した時は記事から時間がたち過ぎていて、みんなが忘れていたのでしょう。私自身も父親の言いつけを守って社内で自慢も不平も言いませんでした。
本社に顔を出した私を朝比奈豊社長と岸井成格主筆が迎えてくれました。いずれも顔なじみの後輩です。雑談していていきさつがわかりました。私が家で昔話になった時に「あれだけ苦労したのに、紙きれ1枚もくれないんだから」ともらしたのを心にとめていた息子が手紙で本社に訴えたのだそうです。担当が驚いて調べたらまさしくその通りとわかり、前例に無い表彰になったとか。それから間もなく他界した息子の最後の親孝行になりました。
感謝状はOB社員が集まる毎友会の総会の席上で渡されました。なんとこの日は「諏訪メモ」が毎日新聞福島版に掲載された6月29日。気の利いた演出でした。大勢の仲間の拍手を浴びて口にしたビールは、ひとしおうまいものでした。
(倉嶋 康)
倉嶋康さんのフェイスブックはhttps://www.facebook.com/naslgate
