2020年3月6日
元編集総務部の國井道子さん「東京都江東区の観光ボランティアガイドをしています」
3月に入って、この頃は甘い香りとともに梅が見ごろの季節です。
梅といえば私の住む江東区では学問の神様、菅原道真を祀る亀戸天神社が有名で、紅白の花をつけて見事です。こちらは藤の花も都内随一の名所です。
と、ここまで記してから、以下はガイドならではのお話を紹介致します。
亀戸では天神様のほか、江戸時代に「梅屋敷」と呼ばれた梅の名所がありました。ここは浅草の呉服商・伊勢屋彦右衛門の別邸で、庭内には多くの梅が植えられ、花の季節には江戸近郊の行楽地として、たくさんの人たちで賑わっていました。なかでも「臥龍梅」と名付けられた一株が有名で、これは龍がまるで大地に横たわっているように見えるところから水戸光圀が命名したと伝えられています。これらの様子は歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」の中の、太い梅の古木を手前にあしらった錦絵で見ることができます。またこの傑作は、かの後期印象派の〝炎の画家〟フィンセント・ファン・ゴッホが摸写したことでも有名で、「日本趣味 梅の花」のタイトルで、オランダ・アムステルダムのゴッホ美術館に所蔵されています。
19世紀に度々パリで開催された万国博覧会以来、日本の美術様式は『日本趣味(ジャポニズム)』として欧州各地を席巻するほど流行し、その異国情緒を感じさせる雰囲気、斬新な構図、鮮やかな色彩などにゴッホは強く魅了されたようです。


その後、「梅屋敷」は明治43年の水害ですべての梅樹が枯れ廃園となりました。
以上が、ガイドの一コマでもあります。
現在は住宅地となり、梅屋敷の案内板があるのみの場所ですが、お客様が江戸時代の様子に思いを馳せていただけるように。そして、亀戸の梅がゴッホと結びついた!!などなど、私にとっても興味深いところを皆さまに語ります。
3年前に、江東区を案内する観光ボランティアガイドの募集を区報で知り、「鬼平犯科帳の長谷川平蔵はどの辺を駆けたのかしら」と単純な動機で応募しました。半年の研修を経て『江東区文化観光ガイドの会』会員としての活動が始まりました。会の構成員は100名を越え、年齢は60,70歳代が多く、会社のリタイア組、主婦が多数です。そしてびっくりするほど健脚。会長のもと、各専門部が組織されています。会社を離れれば皆一般人で、意見をぶつけ合いながらの運営も、どこにでもみられる面白い世界です。まち歩きを通して街を知り、歴史を学びながらいままで気付かなかった場所や出来事の発見をお客様に知らせしようとする熱意は皆、共有しています。居住している身近な街なので、なおさら新鮮で興味が沸きます。私も入会の動機となった鬼平に関しては、本所深川の町おこしとして「一本うどん」が復活されたとのことで、嬉しくなり早速味わいました。楽しみながらの活動でもあります。江戸の城下町を支え、時代に翻弄されながらも歴史を作ってきた下町、江東区。昔は殆どが海で埋立地から発展してきました。現代では更なる埋立地がウオーターフロントの街として開発が進み人口も増えています。また、東京2020オリンピック、パラリンピックの競技場も多く新設されています。旧い時代に思いをはせ、これからの新しい時を共有できる街でしょうか。「楽しいまち歩き」をモットーに、ガイドとしては江戸から現代のつながりが濃い江東区の魅力を誇りに持ちつつ、充分に伝えられるようにと心掛けておりますが、まだまだ勉強不足が続きます。学んだこともすぐに忘れます…。
《参考》まち歩きガイドは現在以下12のコースがあります。観光協会を通じての申込みです。歩きは健康の素!足に自信のある旧友会の皆様、いかがでしょうか。
まちあるきツアーコース
① 深川門仲ご利益コース ② 深川寺町・深江戸コース ③ 深川芭蕉コース ④ 深川佐賀町・永代橋コース ⑤ 亀戸文武ご利益コース ⑥ 小名木川、旧中川、そして荒川を満喫 |
⑦ 浅間神社と旧中川ウォーク ⑧ 深川七福神コース ⑨ 亀戸七福神コース ⑩ 豊洲臨海エリアコース ⑪ 赤穂浪士が歩いた道をゆくコース ⑫ 豊洲市場ご案内コース |
他に四季折々の季節ごとや深川に縁のある人物関連のコースが設定されています。
・江戸の行楽 梅見三昧
・明治丸と桜めぐり
・隅田川テラスをめぐるトワイライトツアー
・松尾芭蕉
・澁澤栄一
などなどですが、3月6日現在はご多分に漏れず新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全てのツアー受付は中止されています。
☆粋な半纏が制服です


(元編集総務部 國井 道子)