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2017年2月28日

「音楽は平和を運ぶ」と訴える被爆者松尾康二さん

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昭和21年2月、広島の「未完成」

 シューベルトの名曲が聴こえるように楽譜を添えて、「それは生き残った人々に、共感と勇気を与えました」。

 こんなユニークな全面広告が2月16日の毎日新聞をはじめ、朝日、読売、日経と地元中国新聞の5紙に掲載された。

 広告主は、特定非営利活動法人「音楽は平和を運ぶ」。

 エッ、社会部OBで、カルビー元会長の松尾康二さん(79歳)が理事長をつとめるNPO法人じゃないか!

 昨年5月、オバマ米大統領が広島入りした日に合わせて、中国新聞に全面広告を出した。

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President Obama, Eradicate All War 
   オバマさん 戦争を廃絶してください

 そして今回――。《原爆投下の半年後、1946年2月、爆心地から4キロ離れた高校の講堂で、シューベルトの「未完成交響曲」の演奏会がありました。これはほとんど死に絶えた広島の人たちの心情から始まり、しかし苦難の中でようやく立ち上がろうとする人々の悲痛なうめきに近い気持、ここまでは短調で表現されていますが、ようやく復興が始まったところから長調、短調が交互に現れ苦難を乗り越えていく広島の人々の心をよく表現されています》

 この演奏会が広島の人たちをどれほど勇気づけたか。「広島の復興はクラシック音楽と共にあった」と広告の中見出しでうたっている。

 松尾さん自身被爆者である。《8歳の時、1・6キロ地点で被爆し、木造建築の下敷きになり…大人たちに助けられ焼死をまぬかれました。近い親戚3家族18人のうち合計10人が直接、間接に被爆死したことになります》

 そして《私の家族5人は全員無事だったので「奇跡」といわれました》。

 父親は焼け野原にいちはやく木造建築の食品工場をつくり、松尾少年も一緒に働いていた。(株)カルビーの始まりである。

 旧制広島高等師範付属中学校(現広島大学付属中・高等学校)の講堂で、かつて同中学の音楽教師だった竹内尚一氏(故人)が指揮して開かれた演奏会。国民学校2年生の松尾少年も聴衆のひとりだった。

 全面広告の反響は大きかった。指揮者の次男(69歳)が電話をしてきた。「私も聴いた」と当時旧制高校の学生(90歳)らからも。演奏会の模様が鮮明になりつつある。

 松尾さんがNPO「音楽は平和を運ぶ」を立ち上げたのは、2014(平成26)年8月。以来、指揮者の大野和士さんを迎えるなど広島市内でクラシックコンサートを開いている。

 ホームページ(http://music-peace.jp/#)では、この全面広告をクリックすると、シューベルトの「未完成」交響曲が流れるのだ。

 この活動ことは松尾さん自身が、毎日新聞の同人誌「ゆうLUCKペン」39集(2017年2月26日刊行)に綴っている。

 「ゆうLUCKペン」39集は、頒価@1千円+送料180円。申し込みは「ゆうLUCKペン」刊行委員会(〒171-0044 豊島区千早1-34-9 千早町ガーデンハウス303 中谷範行気付 TEL080-1027-9340)へ。