2025年10月14日
毎日新聞取材班・大場弘行著『首都圏は米軍の「訓練場」』

藤原書店のHPにある紹介——。
新宿、渋谷、六本木、東京タワー、東京スカイツリー……都心の繁華街上空を、最低安全高度を下回る低空で、わが物顔に飛び交う米軍ヘリ。その飛行経路も安全管理の実態も、日本国民には決して明かされない。
戦後80年の今も「占領期」を引きずった日米地位協定を楯に首都の真上で展開される、米軍機の活動の知られざる実態を徹底調査し、「日米同盟」の実像とその未来を問う。
プロローグで社会部大場弘行記者はこう書いている。
■「日本は米国に従属し、いまだ主権がない」――正直なところ、わたしは在日米軍の取材を始めるまで、こうしたフレーズを聞いても半信半疑だった。日米交渉の内実が明らかになることはほとんどなく、実際のところはわからない。基地のある街で暮らしたこともないため、騒音被害や米兵犯罪の恐怖などを肌感覚で知らない。
■そんなわたしの認識が変わり始めたきっかけは、2020年の夏に、東京のど真ん中で米軍ヘリの異常な飛行を目撃したことだった。米陸軍ヘリ「ブラックホーク」が東京・新宿の高層ビル群を低空で通過したのだ。それはまるで映画のワンシーンのようで、記者歴約20年のわたしも息をのんだ。調べ始めると、東京スカイツリーを軸に周回を繰り返すといった米軍ヘリの異常な飛行を次々と目の当たりにする。首都圏上空に、巨大な米軍機の訓練用とみられる飛行ルートが張り巡らされていることもわかった。
■日本政府は「日米同盟は日本の外交、安全保障の基軸」とお題目のように繰り返すのに、同盟の中核を担う在日米軍のこうした活動実態は、日本の国民にほとんど知らされていない。
大場弘行さんは、1975年生まれ。社会部東京グループ記者。2001年入社。阪神支局、大阪社会部、東京社会部、『サンデー毎日』編集部、特別報道部などを経て現職。
公文書隠蔽の実態に迫るキャンペーン報道「公文書クライシス」取材班代表として第19回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、第2回調査報道大賞「優秀賞」受賞。
日米地位協定をテーマとしたキャンペーン報道「特権を問う」取材班員として第26回新聞労連ジャーナリズム大賞。
著書に『公文書危機――闇に葬られた記録』(毎日新聞出版)、『特権を問う――ドキュメント・日米地位協定』(同、共著)。