2025年10月2日
梅津時比古セレクション① 『ゴーシュを聴く 宮沢賢治研究』

梅津時比古セレクション〈全5巻〉の発刊が始まった。
「音楽文化をめぐる評論の新しい地平」と謳い、第1回配本は「ゴーシュを聴く」。
『《セロ弾きのゴーシュ》の音楽論—音楽の近代主義を超えて』(東京書房2003年刊)は、第54回芸術選奨文部科学大臣賞を受けた。
『《ゴーシュ》という名前—《セロ弾きのゴーシュ》論』(東京書房2005年刊)ほか。
評論家三浦雅士氏の解説にこうある。
「重要なのは、ゴーシュが読者を音楽の新しい次元へと誘うのと同じように、賢治もまた読者を文学の新しい次元へと誘っているということなのである。賢治自身は夭折によって持続を断たれたが、生まれ変わってでも書き続けたいと思っていたに違いない。とすればつまり、梅津は二冊の賢治論によって、新しい音楽だけでなく、新しい文学の誕生をも待望していると述べているのだということになる。むろん、読者の多くも同じだろう。だが、いま現在世界に、ホルツや賢治に匹敵する情熱に突き動かされている詩人や小説家がどれだけいるだろうかと問うてみるがいい。......状況は厳しいが、しかし突き進むほかにないだろう。ここでも私は梅津に深く感謝したいと思う。こういう根源的な問い、根源的な決断に接する機会は、近来、いよいよ稀になってきていると言っていいからである」
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第2回配本は『ざわつく菩提樹—シューベルト研究』
第3回配本は『水車と白鳥—シューベルト研究Ⅱ』
第4回配本は『音と音楽のソナタ—エッセイⅠ1987~2007』
第5回配本は『音のかなたへ—エッセイⅡ2007~2027』
八巻和彦早大名誉教授は、こういっている。
《彼は音楽業界におもねることのない人物として業界で有名だと、業界の人から聞いたことがある。
彼の文章を味わうと、西洋由来のクラシック音楽をめぐって新たな世界を体験できること、必定だ》
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梅津さんは、鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部西洋哲学科卒。71年入社。現毎日新聞学芸部特別編集委員。桐朋学園大学学長、早稲田大学講師を経て現在、桐朋学園大学特命教授。
『《セロ弾きのゴーシュ》の音楽論』(東京書籍)=第54回(平成15年度)芸術選奨文部科学大臣賞および第19回岩手日報文学賞賢治賞。『ゴーシュという名前』(東京書籍)=NHK制定〈日本の百冊〉。『フェルメールの楽器』(毎日新聞社)=2010年日本記者クラブ賞、など各賞を受賞。
その他の著書に『冬の旅――24の象徴の森へ』(東京書籍)、『音のかなたへ』(毎日出版社)、『神が書いた曲』(毎日新聞社)、『天から音が舞い降りてくるとき』『フェルメールの音』(以上、東京書籍)、『音と言葉のソナタ』『耳のなかの地図』『日差しのなかのバッハ』『非日常と日常の音楽』『音をはこぶ風』(以上、音楽之友社)、『死せる菩提樹――シューベルト《冬の旅》と幻想』(春秋社)など。
2019年にはドイツの出版社 Roderer社より Symbole als Wegweiser in Franz Schuberts »Winterreise« を刊行。