2025年4月25日
『NFLドラフト候補名鑑2025』
2025年NFL(米ナショナル・フットボール・リーグ)ドラフトはウイスコンシン州グリーンベイで4月24~26日の3日間実施される。そのガイドブックが、ことしも発行された。2021年以来、5年連続だ。
89入社小座野容正斉さん(元写真部→デジタルメディア局)がトップ記事を執筆、223人のドラフト候補選手の名鑑もつくっている。ベースボール・マガジン社刊、定価1590円。

以下は、小座野さんから届いた原稿。全文掲載します。
ベースボール・マガジン社から「NFLドラフト候補名鑑2025」を刊行しました。4月4日に登録後1週間は、Amazonのスポーツのノンフィクション部門でベストセラー1位にもなりました。
2020年2月の毎日新聞退社直後に、新型コロナ感染症が世界的な大ブレーク。私も、予定していた仕事が、ほぼすべて消滅しました。
無為徒食の日々の中から、苦心の末にひねり出したこの本が、日本のNFLファンの皆さんから一定の支持を得続けていることを本当にありがたく思います。
30代、40代の頃、出張やプライベートで米国圏に出向くと、空港の売店などで必ず目にするのが、NFLドラフトを特集した雑誌でした。何冊も買い込んで、帰宅後、何度も繰り返し読みました。同じものを、今、日本語でファンに提供を続けてられていることに感慨があります。
米国の大学アメフト「カレッジフットボール」は、人気や注目度では、No.1スポーツであるプロのNFLに匹敵します。NFLとカレッジフットボールは、共存共栄のために、 NFLは主として日曜日に試合をやり、カレッジは土曜日とすみ分けています。
たとえば、カレッジフットボールには、10万人以上収容のスタジアム(大学所有)が8つあります。長年、テレビ局と単独放送契約している大学(ノートルダム大)もあります。
そして、全米レベルのスター選手が、多数います。
彼らは、実質的にプロ化しています。「NIL」という制度によって、オフェンスの重要ポジションであるQB(クオーターバック)を中心に、チームからではなく、スポンサーからの報酬を受けることが認められています。2025年に最も高額な報酬を受ける大学アメフト選手は、換算で年俸10億円以上の支払いを受けると言われています。
有名なだけではありません。能力も凄い。例えば、今回の2025ドラフトの候補選手の中で、100mを10秒10で走った選手がいます。彼は陸上競技の米国代表として、国際大会でリレー種目の金メダルを獲ったこともあります。しかし彼は、今回の候補の中では最速ではない。彼より速く走る選手は数人います。
全米レベルで、知名度も実力も高い選手が、どのポジションにも多数存在していて、その選手を、前年成績が最も悪かったチームから完全ウェーバー方式で指名できるのです。
米国のビジネスに似て、NFLのチームビルディングはゼロベースでのスタートです。「すべて更地にして、一からやり直す」というものが多い。ヘッドコーチ(日本で言う監督)や、ゼネラルマネジャーが、新しく変わると、チームを根幹から作り替えようとする場合がほとんどです。
自分の応援するチームが、どん底に落ちて、そこから這い上がる、そういう夢をファンに持たせる構造になっています。
よく言われる「スーパーボウルがNFLで最高のイベント」というのは、ある意味間違っていると思います。なぜなら、結局は、強い2チームの戦いでしかない。
一方でドラフトは、最も弱いチームが主役であり、全32チームのファンが、それぞれに盛り上がることができるのです。
今や、NFLも、ドラフトがスーパーボウルに匹敵するイベントであることを熟知しています。例えば開催地です。NFLドラフトは毎年4月最終週に開催されます。
スーパーボウルは厳冬期の2月上旬(以前は1月)開催のため、基本的に気候が温暖な観光地が舞台となります。しかし、米国で本当にフットボールが盛んなのは、米東部や中部。そのフットボールのハートランドが、少数の例外を除いて、スーパーボウル開催地から外されてきました。
近年ドラフト開催地は持ち回りとなり、スーパーボウルを誘致できない「フットボール州」を舞台とするようになりました。
昨年はミシガン州デトロイトで開かれ、2日間で55万人のファンを集めました。今年は、第1回、第2回のスーパーボウル王者であるパッカーズの本拠地、グリーンベイ(ウィスコンシン州)で開催されます。そして来年は、スーパーボウル最多優勝チームであるスティーラーズの本拠地、ピッツバーグ(ペンシルバニア州)での開催が決定しています。
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私個人の工夫として言えば、気になった候補選手は、試合やプレーだけではなく、記者会見の動画を見るようにしています。カレッジフットボールは人気ジャンル故に、ある程度のスター選手は、試合後の記者会見がyoutubeにアップロードされています。
自分の手柄ばかりを語っていないか、チームの他の選手の活躍に言及しているか、相手へのリスペクトを持っているか、記者の質問に対して真面目に答えているか、地元メディアが多い記者との関係を築けているか、などなどをチェックしています。セルフィッシュな選手は、活躍できない場合が多いからです。
近年、AIで精度が上がってきた音声テキスト化ソフトを使うと、動画音声から容易に英文の文字起こしができます。リスニング能力は著しく低い私ですが、テキストは読めます。
ちなみに元々は日本語のインタビュー起こしのために導入した音声テキスト化ソフトですが、この手のモノは、元来が米国由来なので、英語で使うと最も効力を発揮します。
自身の健康が許す限り、来年も、さらにその次の年も、出版を続けていくつもりです。
(小座野 容斉)