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2024年1月26日

Shinrin-Yoku(森林浴)は日本で生まれた世界共通語、と登山家、今井通子さん

―元社会部・滑志田隆さん主宰「日本林政ジャーナリストの会」新春講演から

 Shinrin-Yoku(森林浴)は、日本で生まれ、世界で通用している言葉であることを初めて知った。アルプス三大北壁(マッターホルン、アイガー、グランド・ジョラス)の登攀に成功した登山家で医師、国際自然・森林医学会(International Society of Nature and Forest Medicine (INFOM))会長を務める今井通子さんが24日、日本記者クラブで行った講演で、だった。

今井通子さんと滑志田さん

 仕掛け人は、78年入社の元社会部・滑志田隆さん(72歳)。滑志田さんが会長の「日本林政ジャーナリストの会」が新春特別研究会として、今井さんに講演をお願いしたのだ。

 今井さんよると、「森林浴」は、1982年7月、当時の林野庁長官、秋山智英さんが提唱した。「森林の中には独特な物質が存在し、森の中にいることが健康な体をつくる」と。

 そこから森林浴研究、エビデンスの追究が始まった。

 その効果——。

 ①森林浴がストレスホルモンを減少させる→特に人工的環境に対するストレス低減に有効。

 ②副交感神経活動が有意に昂進し交感神経活動が有意に鎮静化する→リラックス効果、脳の鎮静化が高まる。

 ③血圧の正常化と血糖値を低下させる→メタボリックシンドローム(生活習慣病)の予防。

 ④抗癌免疫機能を高める→癌の予防効果。

 ⑤活気を上昇させ、緊張・不安、抑うつ・落込み、敵意・怒り、混乱、疲労の症状を有意に低下させる→うつ状態の改善。

 ⑥アディポネクチンの増加→エネルギーバランスの調整と老化防止因子による動脈硬化や心筋肥大の抑制と抗炎症作用の補助。

 「森林散策による総合的な健康維持増進効果」は間違いなくあるという。

 2006年5月には(独)森林総合研究所生理活性チーム長・宮崎良文教授(現千葉大名誉教授、69歳)が共著で『森林医学』(朝倉書店刊)を発刊。

 宮崎教授は、「森林セラピー」Forest Therapyの命名・提唱者。2018年11月には『Shinrin-Yoku(森林浴)-心と体を癒す自然セラピー』(創元社)を出版した。この本は、16か国語に訳されているという。

 もうひとり、日本医科大学リハビリテーション科の李卿教授。一般社団法人日本森林医学会の会長でもある。『森林浴—近くの公園で家族と一緒にリラックス、ストレスを解消し自律神経を整え免疫力を高める新しい健康増進法』(まむかいブックスギャラリー刊)を出版しているが、2018年「SHINRIN-YOKU / Forest Bathing」(PENGUIN BOOKS)を英国と米国で同時刊行、米国でベストセラーになり、35カ国・地域で翻訳・刊行された。この本はその日本語版である。

 今井さんの話で面白かったのは、現在日本各地で「森林セラピー弁当」が売り出されている。「インターネットで調べてみて下さい。道の駅で販売しているところもあるそうです」

 ネットの検索で一番に出てきたのが、鳥取県八頭郡智頭町。

 《智頭町では、町の総面積の93%ある山林を“町の大切な財産”としてとらえ、森のもつ癒し効果に着目した「森林セラピー」をまちづくりの主要なテーマの一つと位置づけ、智頭町森林セラピー推進協議会の設立や智頭町森のガイドの養成、実験実証などを行い、平成22(2010)年4月に鳥取県初の「森林セラピー基地」として認定され、平成23年7月にグランドオープンしました》

 さらに《セラピー弁当づくりを智頭町内の4事業者で担当しております》として、写真付きで紹介している。

 ・ご飯 白米(智頭町産新米)、黒ごま
 ・焼き物 焼き鯖
 ・炒め物 なすと甘長の味噌炒め(智頭町産味噌)
 ・煮物  かぼちゃとさつまいもの甘煮
 ・和え物 智頭町産豆のごま和え
 ・付け合わせ ゆで卵、花にんじん

 《智頭病院の1階にある「まちの食堂 ちづの庭」です。皆さまのために、旬の地元野菜を使い、心を込めてお弁当をお作りしました。どうぞごゆっくりお楽しみください》

 もうひとつ。富山県中新川郡上市町の森林セラピー弁当「旬の香」。

 《「食べた人が健康になるように」と、森林浴のイメージで作りました。旬の素材の味を生かし薄味に、カロリーも抑えてあります。昔懐かしい竹皮の弁当箱の中身は、四季折々に彩り豊かな地元の味。味のバランス、色合い、香り、五感すべてで楽しめるお弁当です》

(堤  哲)