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2023年10月13日

客員編集委員、倉重篤郎さんが「都市登山」の趣味を、日本記者クラブ会報に

日本記者クラブ会報2023年10月10日号転載

 人は足から老いる、というが、当方、有難いことに70歳になっても歩くことに苦がない。どころか楽しくてしょうがない。

 早朝、近所を散歩する。朝のウオーキングは、空気の清涼さと新鮮な陽光に満ちている。考え事にも最適だ。歩いているうちに何か新しいアイデアや発見があったりする。不思議なことだ。歩くリズムが脳髄をシャッフルしてくれるのか、それとも視界の変化が何らかの刺激を与えてくれるのか。

 都心に出ても極力歩く距離を増やしている。リュックの中に地図帳を入れ、会合やアポあれば、できるだけ歩いて移動する。お上りさんよろしく、半分観光気分で街を練り歩く。生まれ落ちてずっと東京住いながら、いかに灯台下暗しであったかがよくわかる。スマホは使わない。さび付き始めた頭脳のナビゲーション機能を少しでも活性化させるのが狙いである。

 地下鉄の連絡通路も然り。エスカレーターは原則使わない。並行する階段を上り下りする。登りは、若者と張り合って1つ飛ばしする。脹脛や太ももが鍛えられ、趣味の登山の役に立つ。下りは、はずむようなリズミカルなステップがいい。足の運びを司る神経系統が喜んでくれる、気がする。

 愛用するのは国会議事堂前駅である。千代田線のプラットフォームから首相官邸前の交差点出口に上がるまで、長いエスカレーター4本分の高度を稼がなければならない。標高差は50メートルあるのではないか。同好の士は少ないが、いないわけではない。なぜか女性が多いような気がする。

 「都市登山」最後の難関は、我がプレスセンタービルである。レスポンスのいいエレベーターを使わずに階段を1つ飛ばしで9階まで上がる。右回り、左回り両方あるが、左翼的気分の日と右翼的気分の日と使い分ける。ここはまだ同好の士は見つけ出していない。

(毎日新聞客員編集委員 倉重篤郎)

 倉重篤郎(くらしげ・あつろう)さんは1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員