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2023年4月17日

毎日新聞事業部勤務だった貝塚健さん(63)が千葉県美術館新館長に 未来につながる道筋を

 =4月16日付千葉版から転載。

千葉県美術館新館長の貝塚健さん

 石橋財団アーティゾン美術館(東京都中央区)の学芸員から、県立美術館の第29代館長に就任した。来年開館50年を迎える同美術館の活性化を託された、初の外部登用だ。「自分の原点に立ち返り、後世に誇れる仕事をしたい」と意気込む。

 幼い頃から両親に連れられ、東京・上野の美術館で芸術に親しんだ。都立白鷗高校時代はサッカー部と美術部に掛け持ち入部。「自分の絵の才能に自信が持てず」美大進学は断念したが、東大で美術史を専攻した。

 卒業論文のテーマにしたのは、館山の漁村を描いた青木繁の「海の幸」だった。「作品が持つパワーが何か、なぜ自分が引かれるのか追求したかった」といい、今も答えを探し続けている。

 その青木に導かれるように1989年、「海の幸」を所蔵するブリヂストン美術館(2019年、アーティゾン美術館に改称)の学芸員に就き、主に日本近代美術の調査研究や展覧会の企画に携わった。念願の「海の幸」にも関わることができた。

 95年1月17日、阪神大震災が発生すると、全国美術館会議による緊急対策として美術品を保護するため、1週間後に神戸市に赴いた。がれきと化した街並みに言葉では言い尽くせない衝撃を受けた。「なぜ美術が存在するのか、という問いを突きつけられた気がした。同時に、美術館をなくしてはならない。人間が生きていくために美術館は絶対に必要だと確信した」という。

 県立美術館の活性化のため、外部有識者の一員として昨年度まとめた骨子案を土台に、具体化した基本構想を策定するのが当面の課題だ。「後世の人たちに『当時の人たちが頑張ったから今の美術館がある』と言ってもらえるよう、未来につながる道筋を付けて次代に引き継ぎたい」【柴田智弘】

 ■人物略歴
貝塚健(かいづか・つよし)さん
 1959年、東京都中野区生まれ。東大文学部美術史学専修課程卒業。西武百貨店、1988年4月、毎日新聞入社、東京本社事業部勤務を経て1989年10月、石橋財団ブリヂストン美術館学芸員に。学芸部長、教育普及部長などを務めた。2023年4月から現職。