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2023年3月27日

GW「松前さくらまつり」で日英親善の桜イベント

 元毎日新聞記者というより桜大使・阿部菜穂子さんのオンライン講演会が25日午後7時から行われた。東洋文庫ミュージアム(文京区本駒込)で開催中の「フローラとファウナ 動植物誌の東西交流」展(5月14日まで)に伴うもので、演題は「チェリー・イングラム 日本の桜を救ったイギリス人」。日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した自著(岩波書店2016年刊)の題名である。阿部さんはロンドンの自宅書斎からパソコンの画面を操作しながら1時間半にわたり、日英の桜物語を話した。

英語版の著書と自宅書斎から講演する阿部菜穂子さん

 「日本の桜を救ったイギリス人」コリングウッド・イングラム(1880~1981)は、1902~26年に3度訪日、多種多様な桜を持ち帰った。英国ケント州ベネンドン村のイングラム邸の庭園では120種類もの桜が咲き誇った。

 一方、日本ではソメイヨシノ一色となり、日本で絶滅した白い大輪の花をつける「太白」(たいはく)は、イングラムの桜園から里帰りしている。

 パワーポイントの画面で、アッと思ったのは、次の写真だ。

 沖縄へ飛び立つ特攻機を女高生が桜の小枝を持って見送っている。知覧基地でこの写真を撮影したのは、西部本社のカメラマン、早川弘(ひろむ)さん(81年逝去64歳)である、とこのHPで紹介したばかりだったためだ。

 阿部さんは、『同期の桜』の歌から《特攻機で「桜のように散る」ことを強要された事実は、西欧社会ではまったく知られておらず、特別に興味を持たれた》という。

 この写真は、英語版に掲載されている。毎日フォトバンクから購入したそうだ。

 日英の民間の桜プロジェクトも進行中で、1万本の桜を日本人から英国人にプレゼントする計画があり、すでに英国各地に7千本以上が植樹されている。

 阿部さんはGWに英国からの「桜使節団」を率いて北海道南端の松前公園を訪問し、桜を通じた日英の交流イベントに参加するという。現地では毎年、「松前さくらまつり」(今年は4月22日~5月7日)が開かれ、交流イベントはこの期間中に行われる。

浅利政俊さん

 松前公園には、250種、1万本の桜が4月中旬から1か月にわたって次々に開花し、お花見を長く楽しめる。多品種の桜を植樹したのが、元小学校教諭の「桜守」・浅利政俊さん(92)だ。

 「松前桜」は、浅利さんが創作した116品種の桜の総称。浅利さんは1993年にロンドン郊外ウィンザー城のある「ウィンザー・グレート・パーク」に友好の証として58本の松前桜を贈っている。2016年5月、英王立園芸協会(RHS)関係者の来日を記念して日英桜文化友好親善記念碑が松前公園内に建てられている。

 阿部さんは、桜の愛好家で英国東部・サフォーク州に桜公園を創っている貴族、ジェイソン・ゲイソーン=ハーディ卿や英オックスフォード大学樹木園の研究員、ベン・ジョーン氏らとともに公園を訪問、浅利さんと再会する。

 さらに知りたい人は、阿部菜穂子さんのHP www.naokoabe.com で。

(堤  哲)