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2021年3月17日

「スパイ関三次郎事件」「検証 レッド・パージ70年」を語る会

 2020年の春と暮に出版した2冊の本を語る会を3月15日、水道橋「余白」で開いた。最初に2月21日、88歳で永眠された関千枝子さんに黙とうを捧げた。毎日新聞OBでもある関さんは、1985年に「広島第二県女二年西組」を刊行して以降、ヒロシマ原爆被爆者として、悲惨な実態を訴え続け、核兵器廃絶を願っていた。

 語り合った一冊は「スパイ関三次郎事件―戦後最北端謀略戦」(2020年4月27日、河出書房新社刊)、もう一冊は「検証 良心の自由 レッド・パージ70年 新聞の罪と居直りー毎日新聞を手始めに」(同年12月31日、北大生・宮澤弘幸「スパイ冤罪事件」の真相を広める会刊)。呼びかけ人の提起と語られた内容を紹介する。

 「スパイ関三次郎」は、毎日新聞OBの佐藤哲朗さんが約50年の歳月を重ねて、戦後混乱期の宗谷海峡で起きた米ソ二重スパイ・関三次郎の数奇な半生と真相を丹念に追ったもの。そして副題格の注目は、1952年に発生した「白鳥事件」の真犯人と思われる人物をあぶりだしていることだ。佐藤さんは、本書を読んだ現代史家の保阪正康さんから「白鳥事件」についてぜひ書いて欲しいと電話があったと紹介した。高齢で自信がないと言いながらも鍵を握る人物を追って網走まで取材に行っている。「白鳥事件」は依然として残る戦後史の暗部だ。ぜひ解明して出版してほしい。

 「検証 レッド・パージ70年」は、「レッド・パージ反対全国連絡センター」発行の60周年と65周年に行われた集いの記録集に、新聞・通信・放送で49社、約700人がパージされたのに、それが一行も記録されていないこと、そして毎日新聞で解雇された政治部の嶌信正さん(毎日新聞OB・嶌信彦さんの父上)の回顧録「自処超然」に、自らが解雇された状況と裁判所への陳述書全文が掲載されていることを知ったことが端緒になった。昨年一年間、大住広人さんが住まいの近くにある国立国会図書館関西館に日参して、資料を集め、事件後70年の節目である2020年最後の日である12月31日に刊行した。

 レッド・パージに関しては、60年代から一部関係者による発掘・調査が進められているが、人権・報道に最も敏感であるべき毎日新聞を含めた新聞が、これについて徹底調査も総括もしていないことが、現在のマスコミに対する不信感の要因になっていると言わざるを得ない。

 この会には、新聞労連初の女性委員長で、毎日新聞から追われた小林登美枝さんについて記事と写真を提供してくれた明珍美紀さんと、昨年選出された現委員長の吉永磨美さんも参加した。ジェンダー平等が改めて最優先課題となっている今、二人の女性を委員長として送り出している毎日新聞労組は先駆的だ。吉永さんは「レッド・パージについては注目している。今、デジタル関連法案が問題になっているが新聞経営者の認識は非常に弱い。また大手・地方紙を問わず、新聞経営が危機的状況にある。先輩たちの支援を要請する」と訴えた。

(福島 清)

後列左から、佐藤哲朗、嶋倉貞男(顔が少し隠れてごめんなさい)、永井浩、赤川博敏、石原尚樹、高尾義彦、亀山久雄、岩田健一、水久保文明。前列同、里見和男、大住広人、戸塚章介、吉永磨美、明珍美紀、福島清