随筆集

2023年5月15日

平嶋彰彦のエッセイ 「東京ラビリンス」のあとさき その25 なみが帰ってこない(抜粋)

文・写真 平嶋彰彦 奇数月の14日更新
全文は http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/53496877.html

ph1 手入れ前の庭。2022.08.29 8:36am

 昨年の8月29日、夏の間ほったらかしにしていた庭の手入れをした。そのときに撮った写真がph1~ph3である。前回の連載エッセイで、わが家の小さな庭と飼いネコについて触れることがあった。写真ph1をご覧いただきたい。庭と通りの境に雑然と植えたイチジク、サンショウ、キンカン、ノウゼンカズラなどが勝手放題に枝を伸ばしている。

 写真ph2、ph3のネコは、わが家の飼いネコである。名前はなみで、生後11カ月。家の中に閉じ込めておくのはかわいそうなので、妻と私の目の届くときは庭で遊ばせていた。この日はいつもとようすが違うせいか、木陰にじっとすわったまま、私のすることをおとなしく眺めていた。

ph2 なみ。2022.08.29 1;17pm

 それから6日後の9月4日、私が外出から帰ると、なみが玄関に出てこない。妻と息子が2人そろって浮かない顔をしていた。なみが目を離したすきに逃げ出したまま帰ってこない。近所を捜しまわったがどこにもいない。かれこれ5時間になる。というのである。

 これまでもネコは飼ってきた。逃げ出しても、たいてい1時間か2時間もすれば帰ってくる。迷子になって家に帰れなくなったか、そうでなければ、連れ去られたのである。

 翌日の夜明けから捜索を始め、習志野市役所と習志野警察にも失踪届を出した。

 すると、どこで知ったのか、同じマンションに住むご夫婦が、捜索願のポスターをつくってくれるという。近くの動物病院とコンビニに貼らせてもらいましょうといい、その手配までしてくれた。ご夫婦は野良ネコの世話をするグループのメンバーで、近くには同じようなグループが2つもあるとのこと。そちらへも連絡し協力を頼んでくれるという。

 これも前回の連載で書いているが、近所の一戸建てにやはり野良ネコの世話をしている私と同年配のご夫婦が住んでいる。同じグループのメンバーである。そのご主人が、迷いネコを捕まえるのに役立つかも知れないということで、どこからか動物用の捕獲機を借りてきてくれた。溺れる者は藁をもつかむの諺を絵に描いたように、捕獲機は専用駐車場の庭への出入口に仕掛けることにした。

 そのいっぽうで、私は私なりに捜査の協力を頼むチラシをつくった。近くにあるカメラのキタムラで、なみの近影をサービスサイズで60枚プリント(ph4)、写真の裏には彼女の特徴と連絡先などを書いた下記のメモを貼りつけた。

ph3 手入れ後の庭となみ。2022.08.29 3:42pm

ネコを捜しています
9月4日午後3時ごろより行方不明に
名前…なみ/種類…ノルウェージャンフォレストキャット/性別…メス/年齢…11カ月/体重…4キロ
特徴…①体の色が白・黒・茶の三毛/②水色の首輪をつけている/③しっぽは長くて太い/④目は茶色がかった黄色で、大きい/⑤耳の内側に長い毛が生えている
(以下略)

ph4 捜索願に使ったなみの肖像。2022.08.21